近江鉄道にモバイルSuicaで乗車してきた

近江鉄道線で交通系ICカードの利用が始まる

米原駅で発車を待つ多賀大社前行きの800形電車

滋賀県東部を走る近江鉄道鉄道線で、2026年3月1日から交通系ICカードの利用が始まった。近江鉄道線は、米原、彦根、近江八幡、貴生川の4駅でJR線と接続するネットワークを有している。
JR米原駅の東口に隣接する近江鉄道の米原駅に入ると、真新しい簡易型のICカード改札機が鎮座していた。

米原駅のIC改札機

米原から多賀大社前行きの電車に乗り込むと、整理券発行機が目の前にあった。車内を観察すると、2両編成の車端部には運賃箱と出場機が設置されている。交通系ICカードの導入にともない紙のきっぷの発売(普通乗車券)が終了したため、ICカードを利用しない場合は整理券を取って乗車し、後払いで運賃を支払う運用となった。
では、この車内の「出場機」は何に使うのだろうか。

近江鉄道800系電車の整理券発行機と車内出場機

全線で交通系ICカードが導入された近江鉄道線だが、IC改札機の設置状況は少し独特だ。入場機は全駅に設置されているのだが、出場機が設置されていない駅が2026年時点で半数程度ある。こうした駅でICカードを利用して降車する際に利用するのが車内の出場機である。

入場機・出場機の設置状況(近江鉄道Webサイトから引用)

近江鉄道線の履歴表示は「OR」

さて、多賀大社前駅で下車して多賀大社を参拝したあと、さっそくモバイルSuicaアプリのSF利用履歴を確認してみた。

近江鉄道線の米原駅は「OR米原」、多賀大社前駅は「OR多賀大」と表記され、事業者表記はOhmi Railwayに由来すると思われる「OR」だった。近江八幡駅は「OR八幡」となっていたので、駅名部分は単純に先頭から切り出しているわけではないようだ。
モバイルSuicaの利用履歴では、JR西日本の「JW米原」、JR東海の「JC米原」に続いて、近江鉄道の「OR米原」という表記パターンが増えたことになる。

モバイルSuicaアプリで近江鉄道の事業者表記はOR

Apple PayのICOCAの利用履歴では事業者名を日本語表記する例が多いことから、「近江○○」を予想していたが、意外にも「OR貴生」(貴生川駅)、「OR八日」(八日市駅)と、モバイルSuicaと同じく英字の「OR」表記を採用していた。

Apple PayのICOCAでも近江鉄道は「OR」

近江鉄道バスと湖国バスにもモバイルSuicaで乗る

近江鉄道にはバス事業部門があり、直営の「近江鉄道バス(近江バス)」と、子会社の「湖国バス株式会社」が運行する路線がある。

湖国バスと近江鉄道バス(近江バス)

この2社にもモバイルSuicaで乗車してみた。路線バスには鉄道線より5年早い2021年3月に交通系ICカードが導入されている。

モバイルSuicaの利用履歴について、私は名鉄グループの「名鉄Gバス」表記を念頭に「近江鉄道」と共通化されていると予想していた。しかし、実際には「湖国バス」と「近江バス」でそれぞれ表示が使い分けられていた。

「近江バス」と「湖国バス」は表示分けされた

近江鉄道は交通系ICカード導入で歴史を刻み続ける

西武鉄道の完全子会社である近江鉄道は、鉄道線では西武鉄道から譲渡された車両が活躍し、近江鉄道バスにはお馴染みの「レオマーク」が掲出されている。
これまで車窓からその姿を見かけることは何度もあったが、今回のICカード利用開始を契機に初めて乗車した近江鉄道は、著名な観光地こそ少ないものの通勤通学の貴重な足となっている様子が色濃くうかがえた。一方で、経営状況の厳しさから2024年度からは施設や車両を一般社団法人近江鉄道線管理機構が所有し、近江鉄道が運行を担う「上下分離方式」へと移行している。

八日市駅に入線する300形電車

乗り換えのために下車した八日市駅では、改札前に「デニムの聖地」をアピールする鮮やかな装飾がなされており、そのインディゴブルーが駅舎に彩りを添えていた。また同駅の構内に設けられた、明治31年の開業から120年を超える歴史や貴重な鉄道資料を紹介する「近江鉄道ミュージアム」の展示を眺めながら、地域と共に歩む鉄道の未来と、次なるモバイルSuicaでの旅の行き先に思いを馳せた。

八日市は「デニムの聖地」